Smiley face
「オッペンハイマー」(C)Universal Pictures. All Rights Reserved.

 「原爆の父」と呼ばれた物理学者の半生が、現代社会に問いかけるものとは――。米アカデミー賞で作品賞など7部門を受賞した米国映画「オッペンハイマー」が日本で公開された。カリフォルニア大学バークリー校の教授で、オッペンハイマーがつくったグループの流れをくむバークリー理論物理学センター長を務める野村泰紀さんに、物理学者として映画をどう観(み)たか、開発者の責任についてどう考えるか、聞いた。

 ――野村さんにとって、オッペンハイマーはどんな存在ですか。

 非常によく慣れ親しんだ名前で、僕の今いるフロアに、この部屋にいたという盾が付いている部屋が実際にあります。オッペンハイマーはヨーロッパが最先端だった当時、アメリカに最先端の理論物理を持ち込んだ人です。バークリーでは原爆とは全く関係ない仕事をしていて、あのままサイエンスをやっていれば、結構面白い仕事をしたかもしれない、とも思います。

 トップクラスではあるけれど、理論物理を塗り替えたアインシュタインのような業績を残したわけではなく、不可能だと言われたプロジェクトを、人を集めて推進した。非常にカリスマ性があって、今で言うとイーロン・マスク氏とかスティーブ・ジョブズ氏のような感じの人で、馬力があって周りを巻き込んで何かをつくる。毀誉褒貶(きよほうへん)がありますが、非常に大変な時代をドラマチックに生き抜いた人、という感じです。

 ――映画をご覧になって率直にどう思いましたか。

 僕は物理をやっているので、あの時代の雰囲気が非常によく出ていると思ったし、物理学のスターもいっぱい出てきて、面白いと思った。でも相当シリアスな映画で、ナチスドイツが先に原爆をつくるかどうかという緊張感の中でやっていたというのも伝わってきた。物理学や原爆というよりは、人間と政治のドラマという感じだと思います。

 非常に象徴的だと思ったのは、アメリカのやり方。今でも全く同じです。

 かつての原爆と同じように…

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